2018年01月21日

【ことば学講座】自分の思考を論理的に意識してみると……

●演繹的と帰納的

「演繹的、帰納的というのがよくわからない」と話していた受講者がいました。

詳しくは次回以降の「ことば学講座」で取り上げますが、ちょっとだけ追加でレッスンしておきましょう。

http://wsi-net.org/kotoba.html (ことば学講座)

演繹法や帰納法といった推論を、日常的に意識しながら生活している人はいないでしょう。

「論理的思考」のトレーニングとして、一時的でいいので意識してみると、なかなかおもしろい。

「演繹とか帰納とか、そんな理屈っぽい考え方はまったくしていない」と思い込んでいた人も、意識してみたら「ありとあらゆる思考が演繹的、帰納的だった……」と気づいて愕然とするかもしれません。

演繹的、帰納的思考を次々につなげて使っている自分にも気づくでしょう。

お正月に「今日は元日だから、あの店お休みじゃない?」「だよね、まさか元日からやらないよね」といった会話があったなら、「元日はお休み」という前提から出発して、「だからあの店もお休み」という推論をしたことになります。

「演繹的に考えて」なんて前置きをする人はいませんが、そういうことです。

これが「演繹的」です。

ところが実際に店の前を通りかかったら、営業していた。

「あれ、元日なのにやってる!」と驚いた。それを聞いた友人も、「そういえば思い出したけど、昨年の元日もこの店は営業していた気がする」。

すると、まだ「事実」は2例に過ぎないにもかかわらず、「この店は元日から営業」という結論を得る。

これが「帰納的」です。

「えぇ〜っ、こんなテキトーでいいの?」という声が聞こえてきそうですね。

営業している店をたった一軒見ただけで、しかもその店に関する友人の記憶だって確かかどうかわからないのに、前提を書き換えてしまっていいのか。

しかし、この程度の「納得感」で動いているのが実情でしょう。納得すれば、人は動けます。

それに、「元日はお休み(を疑ったほうがいい)」という多くの人が共有している前提を書き換えたわけではありません。あくまでも「この店」限定の結論です。

実際には、表面に出てこない推論もたくさんあります。たった2例から結論を導いたように見えますが、「同じ店が年によって元日営業をしたりしなかったりするケースは少ない」「利用客のことを考えれば、ある程度は規則的に営業日を決めているはず」「街中は元日も人手があるから営業する店が増えてきた」といった推論の材料が水面下で動いています。

このように、ガチガチに論理的でないにせよ、「納得感」のある論理的思考によって、「この店は元日は営業」という結論に至りました。

すると、翌年の元日には、「あの店は元日もやっているから、今日もきっと営業しているよ」「じゃあ行ってみようよ」となるかもしれません。

これは「演繹的」ですね。



●テキトーな中にも論理はある

「じゃあ行ってみようよ」「行こう行こう」と出かけてみたら、閉まっていた。

「あれ、おかしいね。元日も営業する店なのに」「う〜ん、今年から元日は休むことにしたのかな」と、早くも前提としていた「この店は元日は営業」が揺らぎだした。

あたりを見回すと、隣の店も、向かいの店も、閉まっている。

にわかに「元日はこのあたりはシーンとしている」という空気が強くなる。

「なんかこのへんみんな休みみたいだね」と、非常に曖昧でテキトーな推測を誰も反論せずに受け入れて、「駅のほうに行ってみようか」と話は進んでいく。

「なんか」「このへん」「みんな」「みたい」って、あらためてテキトー過ぎるにも程があるのに、平気で「だね〜」と会話が成り立ちますね。

そんな「納得感」でいいんですよね、日常の会話は。

テキトーながら、テキトーな中にもそれなりに論理はあります。

これまた不確実で数少ない材料から「帰納的」に、「この店は元日はお休み」という結論を出しました。

来年は、この結論を前提として演繹的に「行っても閉まってるよ、きっと」とほかの店を選ぶのか、それとも実際に行ってみて「あれ、今年はやってた」と帰納的な推論の材料を手に入れるのか。

このように、私たちは演繹的思考と帰納的思考を無意識のうちに使いまくっています。

* * *

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posted by テノール齋藤 at 16:38| Comment(0) | ことば学講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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