2017年12月03日

【声のサロン】クリスマスだからクリスマスソング(Stille Nacht)

●「Stille Nacht」を原語で歌ってみよう

クリスマスシーズンなので、クリスマスソングを使って発声トレーニングをしましょう。

クリスマスソングの多くは讃美歌なので、ハモるとたいへん美しい。天井の高い教会に神々しい響きがこだまする感じをイメージできますか?

ハーモニーを味わうには最適なジャンルといえます。

そんな美しい歌の中で今回取り上げたのは、日本人でもみんな知っている「きよしこの夜」です。

ただし、原語で。

英語版の「Silent Night」はご存知でしょう。しかし原語はドイツ語です。

タイトルは「Stille Nacht」で、「シュティレ ナハト」と読みます。

今日は「声のサロン」の追加レッスンとして、ドイツ語の発音について少しお話しします。


Stille Nacht (Joseph Mohr作詞、Franz Xaver Gruber作曲)

Stille Nacht, Heilige Nacht,
シュティレ ナハト ハイリゲ ナハト
Alles schläft; einsam wacht
アレス シュレーフト アインザム ヴァハト
Nur das traute hochheilige Paar.
ヌァ ダス トラウテ ホーホハイリゲ パール
Holder Knabe im lockigten Haar,
ホルダー クナーベ イム ロキゲン ハール
Schlaf in himmlischer Ruh!
シュラーフ イン ヒムリシャー ルー
Schlaf in himmlischer Ruh!
シュラーフ イン ヒムリシャー ルー



●カタカナでは表しきれない

どんな外国語とも同じように、ドイツ語の発音をカタカナで正確に表すことはできません。

ドイツ語を少しでも習った方は、「ゲーエン、ギング、ゲガンゲン」を聞いたことがあるでしょう。gehen(行く)の活用(原形、過去形、過去分詞形)をこのように唱えて覚えたはずです。

しかし、実際の発音を耳で聞いたことのない人がこのカタカナを読んだら、実際のドイツ語とはかけ離れた発音になります。

私は学生時代に「ゲガンゲン」(gegangen)の発音をドイツ人に笑われ、「もう一回」「もう一回」と繰り返しをせがまれ、繰り返すたびに笑われて、「それはドイツ語ではない」と断定されました。

「ゲガンゲンの何が違うんだ。笑っていないで、ちゃんと教えてくれ」と頼むと、一音一音直してくれました。「基礎単語1個にこんなに苦労するのか」と気が遠くなるくらい、違うんです。

最初の母音が違う、アクセントの強さというか勢いが違う、最後の「g」の音が違う。

最初は「ゲ」ではなく「ギ」に近く聞こえる。でも「ギ」ではない。

真ん中の音節がしっかり強くなる。強いだけでなく、勢いがあるようにも聞こえる。

前の2つの「g」は普通の「g」ですが、最後の「g」だけは鼻音になる。ここが最大の違いでした。

では、正しい発音は「ゲガンゲン」ではなくどうなるかといえば、カタカナでは手に負えません。

発音をカタカナで完璧に表現するのは不可能、と知っておいてください。



●この音符にどの母音が乗るか

そこで、うまく原語で歌うコツとして、「この音符にどの母音が乗るか」という見方をしてみるといいでしょう。

Stille_Nachtの楽譜

たとえば、「Nacht」(ナハト)の母音は「a」ひとつですから、4つ目の音符に乗る母音は「a」だけです。カタカナの「ナハト」では3音節になってしまい、あふれてしまいます。

出だしの「Stille Nacht」を使って、もう少し詳しく見てみましょう。

「Stille Nacht」から母音だけを取り出すと、「i-e-a」となります。最初のiは音符2個に渡って乗るので、1小節目の4つの音符には「i-i-e-a」と乗ります。

母音だけで歌ってみると、よくわかるでしょう。

この楽譜のすべての小節を見ていくと(発音重視で文字にすると)、

「i-i-e-a」「ai-i-e-a」「a-e-e」「ai-a-a」
(aiは複合母音といって1個扱い)

このように歌えます。

この歌い方に馴染んでから、これ以外の母音が加わらないように気をつけながら、子音を追加して歌ってみましょう。

いかがですか? カタカナの「シュティレ」や「ナハト」とはだいぶ違う音になりますね。

カタカナ読みをすると、「シュ」に「u」のような母音が入ってしまう。「ハ」には「a」、「ト」には「o」のような、存在しないはずの母音がくっついてしまう。

最もありがちなのは、「ch」と「t」の間に「a」のような母音が入ってしまう発音です。

音符の数からいって、そんなところに母音が入る余地はない、という見方ができると、ドイツ語の発音に近づいていくでしょう。



●「r」もいろいろ

語尾の「r」にもさまざまなバリエーションがあります。喉の奥で出す「r」もあれば、舌先ではじく音を出す「r」もある。「Nur」を「ヌア」と書いたように、母音化が起こるケースもあります。

「Paar」の語尾も、「r」をしっかり発音するケースもあれば、「母音化させて伸ばしっぱなし」のような発音もある。

「himmlischer」の最後も、「シャー」やら「シェル」やら。

方言的な違いだけでなく、個人差もあるそうです。場面や前後の流れによっても、発音が変わるそうです。

そこまで来ると、もはや外国人としてはお手上げですね。

ほかにも、「au」は「アウ」よりむしろ「アオ」に近いなど、微妙な音の違いがたくさんあります。

まあ、「声のサロン」で歌を扱う目的は「発声技術を高める」ためであって、語学レッスンではないので、あまり発音に神経質になっても本末転倒ですが、かといって「カタカナ発音まる出し」にならないように、丁寧にトレーニングしましょう。

それでは、二声でハモれるように、下のパートをしっかり練習しておいてください。

* * *

新潟市で共鳴発声法の話し方レッスン
ウェブ:http://wsi-net.org/
メール:tenor.saito@gmail.com
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posted by テノール齋藤 at 13:20| Comment(0) | 声のサロン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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