声にはスイートスポットがあります。
声帯の使い方や共鳴の捉え方が最高の状態になったとき、まるで小さな一点に声が集まっているかのように感じられるポイントのことです。
楽で、気持ちよくて、まさにスイート。
スイートスポットは共鳴発声法で使われる言葉ではありますが、もともとはテニスかゴルフの用語のようです。
あるテニスプレイヤーの話では、ラケットのスイートスポット(最適打球点)でボールを捉えると、ラケットをしっかり握らなくても、親指と人差し指で挟んでいる程度の力でポーンとボールが返っていくといいます。
私が昔、テニスの真似事をさせてもらったとき、「もっと握力を鍛えないとボールが安定しないな」なんて感じたのは、単にスイートスポットで捉えていなかっただけなんですね。
スイートスポットで捉えれば、とにかく楽で、とにかく気持ちいい。
●発声にハマるメカニズム
声のスイートスポットは、知識としてではなく、体で覚えるものです。
「熱い」という感覚を言葉でいくら説明されても、熱さの体験には近づかないようなもの。
皮膚の感覚点で捉えた刺激がどうなって脳に伝わってどうなる、なんて詳しく説明されても、いや、詳しければ詳しいほど、「熱い!」という体験からはかけ離れていく。
声も似ているな、とつくづく思います。
言葉ですべて説明するには声の持つ情報量が多すぎて、手に負えない。体で覚えるしかない。
特に、正解にたどり着いてスイートスポットに入ったときの「これだ!」という感覚は、本人にしかわかりません。
本当の意味で「発声にハマる」瞬間です。
このあたりになると、まさに「知る人ぞ知る世界」でしょう。
「これだ!」の感覚を経験した方なら、よくわかるでしょうね。
まだ経験していない人は、「わかる人にはわかる、わからない人にはわからないなんて、当たり前じゃないか」と、煙に巻かれているような、イジワルされているような気分になるかもしれない。
でも、そういうものなんですよね。
丁寧にトレーニングすれば、やがて「これだ!」が味わえますから、大丈夫ですよ。
●発声の形が体に馴染むと入りやすくなる
かといって、スイートスポットを知った人と知らない人が「天国と地獄」の違いかというと、そう単純でもない。
「知らぬが仏」という言葉もありますからね。
知ってしまった人は、「うまく入らない苦しみ」も知ることになる。
スイートスポットに入った気持ちよさを知っているから、うまく入らないときにあきらめきれない。
だから、いい。たゆまぬ向上心につながります。
ある意味、「大当たりの興奮と快感を知ってしまったギャンブラー」もこんな状態なのかもしれませんね。
良いことを教えましょう。
「スイートスポットに入った感覚がわかるからこそ、うまく入らないときに苦しむ」と言いましたが、トレーニングによって「入る精度」が高まっていきます。
まるで良い発声の形が「体に馴染む」ように、「入りやすくなる」のです。
まるで「良い共鳴の形に合う体」に育っていくかのように。
馴染むって、なんだかいいですね。
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